教育

元公立中学校教員が、部活動に対して思うこと

私は、大学卒業後採用され、8年間担任と部活動顧問を続けてきました。

人数が多く、ほとんど活動できない部活動も経験したり、県ベスト4レベルのチームを全中出場に向けて必死に競技の勉強をしたりと本当にいろんな経験をさせてもらいました。

部活動を通して学んだことはとっても多かったんです。

最近は、部活動に対する批判をよく見かけます。

そこで、【本当に部活動は、なくなったほうがいいのか!?】を考えていきたいと思います。

「部活動のいいところ」と「部活動の悪いところ」を整理して議論していきます。

決して、ブラック部活動を推奨しているわけではありません。部活動を頑張りたくない!という人を否定しているわけでもありません。

部活動のあり方がより良いものとなってくれたらいいなと思っています。

部活動のいいところ

いいところ その1:生徒と関わるチャンスが増える

生徒と関わることが、教員の技能を成長させる一番の近道です。

これは、まず間違いありません。

いろんな生徒と関わり、話をして、「どこにつまづいているのか?」や「何が不安なのか?」などいろんなことを聞いて生徒に寄り添った視点をもてるようになると成長が早まります。

教科指導と部活動指導の両方を頑張ることで、1人の生徒をいろんな視点で見ることができるし、いろんな感情に触れることができます。

私自身も、教科指導と部活動指導の両方で大切な気付きをたくさんさせてもらった経験があります。

「教師として成長したい!」と思うのであれば、部活動に積極的に参加するのはとっても有効な手段だと思います。

だからと言って、学校の業務をほったらかして部活だけするとか、ブラック部活動を推奨する意図はありません。

あくまで、決められたルールの中で、自分自身に無理がないように頑張るのは教師力をつける有効な方法だというだけです。

また、部活動に消極的な先生を攻撃する意図もありません。部活だけが教師力を上げる唯一の方法だというつもりもなく、「教師力を上げるには多面的に頑張ることが必要で、その1つに部活動があってもいいのでは?」という考えを述べているだけです。

いいところ その2:保護者と関わるチャンスが増える

これは、いいところでもあり悪いところでもあります。

とにかく、煩わしいと感じてしまう部分ですよね。

しかし、ここを地道に丁寧に対応していくことで、保護者と生徒からの信頼が少しづつ積み重なっていきます。

長期の積み立て投資をしている感覚です。

長期の積み立て投資と違うのが、何もしていないと勝手に負債が大きくなっているという点です。

きちんと対応さえすれば、ドーンと最後に返ってくるので、その感覚さえつかめば結構頑張れると思います。

全中を目指して頑張っていたころは、本当に毎日保護者と連絡を取り合っていました。

大会や練習試合で会うたびに、成長の様子や頑張ってほしいことを話すようにしていました。

顧客に対して、サービスの内容を丁寧にし説明し、問い合わせがあれば丁寧に対応するのはいたって当たり前ですよね。

まさに、そんな感覚です。そして、説明が丁寧ですぐに対応してくれる営業さんにはそれだけで好印象をもってくれるはずです。

いいところ その3:結果を出せば信頼してもらえる

中学校の教員で部活を一生懸命やっている人は少数派です。

ほとんどの先生が一生懸命やっていない中で、結果を出すっていうのは意外にコスパがいいように思います。

特に、最近は部活動の活動時間も厳しく制限される傾向にあります。

教員の部活動へのモチベーションも年々低下しています。

ブラック部活動が当たり前だった時代から比べると、地域によって違いはあるものの全体的な競技力は確実に低下しています。

先生に熱意と技能があれば、ある程度の結果は出しやすい時代になっています。

熱意というのは、たとえば、部活動を見るために自分の業務を先に終わらせて、少しでも長く生徒と部活動をしようということです。

熱意のある先生は、保護者や生徒から信頼されます。

全員の生徒、全員の保護者や生徒から感謝されることはなくても、味方になってくれる保護者は確実に増えてくるはずです。

たとえ結果が得でなかったとしても、そこで得た「考え方」は、ほかの業務にも生きてくるはずです。

部活動のむずかしさ

むずかしさ その1:保護者対応

いいところでもあり、悪いところでもあるのが保護者対応です。

指導者の技能に対して、文句を言われるのが一番つらいことではないでしょうか?

どうしようもないことで文句を言われるのは本当に苦痛ですよね。

そして、「どーせ先生は、野球のことわかってないよ!」とか「あの采配はダメだ!」とか家で言われると、生徒の先生を見る目も変わってきます。

これは、専門競技以外をもつ先生が部活を見たくない理由に入ってくると思います。

最悪なのが、年配の先生が、「俺も昔は専門外の競技を指導していたが、県大会ベスト4まで勝たせることができたぞ!」とかマウントをとってくるパターンです。

その場合は、「どうやったらそんなチームがつくれますか?」とアドバイスを求めてやり過ごすしかないです。

そうやって聞いて、取り入れているうちにキャラと合うものが出てきます。

「マウントをとってくる先輩には、どうやって指導していたのですか?」と質問して気持ちよくなっていてもらいましょう。

ときには、金言をいただけるかもしれません。

むずかしさ その2:お金の管理

部活動のお金の管理も大変です。

普段の業務に加えて、お金をきちんと管理していく必要があります。

PTA費や、全国大会出場の補助金などいろんなところから出てくるお金に対して帳簿を作成し、整合性をとらなければいけません。

1つ1つは、大した仕事ではありませんが、気を使うお金の管理はやはりしんどい仕事の1つです。

むずかしさ その3:練習計画などのスケジュール管理

生徒の練習計画も、なかなか大変な業務の1つです。

練習試合を入れたいけど、なかなか相手が決まらないなんてこともしばしば。

もし、急に練習試合が入った場合は、「急に練習試合が入った理由」や「この時期にこの学校と練習試合をする理由」を説明するように心がけていました。

いろんな業務の中で、日程調整をするためミスをしてしまうこともあります。。。

先生が、練習の日程を勘違いしていたなんてことを経験した人もいることでしょう。

トラ猫塾長

塾長も教員時代に、部活動の時間を間違えていたなんてこともありました。

練習試合の直前にミスが発覚すると、目も当てられません...

そんなときは、それぞれのご家庭に電話連絡をして謝罪をしていました...

計画の調整をするマネージャー業をしながら、コンテンツ(練習内容)をつくる仕事もしているので意外と大変です。

生徒の家庭の予定にもかかわってくるのでかなり気を使う業務の1つです。

部活動の本当の課題

ここまで、部活動のいいところと悪いところを書いてきましたが、部活動の問題点は1つだと思っています。

部活動をするかしないかを選択できないということです。

部活動をやりたい人にとっては、制限されることが煩わしく感じます。部活動をやりたくない人にとっては、そもそも部活動をやりたくありません。

これからの部活動の在り方で大切なのは、部活動をやる、やらないを選べるように変化していくことだと思います。

とっても難しいことだとは思いますが、今の日本の教育は、生徒が選んだり判断する場面が少なすぎるように思います。

生徒が、自分の責任で判断し、失敗したり成功した結果をきちんと自分事としてとらえる機会を増やしていくべきです。

日本の教育の行方に正解はないと思いますが、「現在必要であろう対策」を積極的に打ち続けられる、変化が速い教育業界になってほしいと切に願います。

まとめ

  • 部活動のいいところ
    教師として成長できる絶好のチャンス
  • 部活動の悪いところ
    通常の業務以外に、保護者対応、お金の管理、スケジュール管理を1人で行わなければならない。
  • 今後の部活動の方向性
    部活動をするかしないかを生徒が選べる環境にしていくべき